最近聴いた音楽から
・Claudia Mahnke, クラウディア・マーンケ ドイツのメゾソプラノ。N響との、マーラー『大地の歌』を某国営放送にて視聴。とにかくマーンケの歌が圧倒的に素晴らしかった。マーラーの求める世界観、寂寥、死を前にした絶望、空漠とした感情、それらを圧倒的な共感を持って如実に描き切った。絶唱といいたい。特に6楽章。なので、2,4,6楽章ばかり繰り返して聴いている。1,3,5楽章は申し訳ないが聴く気がしない。テナーの声も歌い方も不愉快。オケは熱演。
クラウディア・マーンケの録音はあまり出ていない様子。ナクソスから、メンデルスゾーンのオラトリオ「エリア」。それと、amazonでメンデルスゾーンの交響曲2番「賛歌」を、MP3で販売している。(追記:←交響曲全集のCDを売っていることが判明(笑))。聴いてみなければ。
どこかのレコード会社はこの人の歌でマーラー『大地の歌』をCD化すべし!
・Lisa Batiashvili, リサ・バティアシュヴィリ。グルジア出身ドイツ在住のバイオリニスト。現在、二児の母。これまた某国営放送にて(笑)、ブラームスの協奏曲の1番。素晴らしい。存在感のある音、揺るぎないフレージングの構築、自然な呼吸、活き活きとしたアゴーギク。熱を帯びた感情表現と客観的な構成の両立。
バイバ・スクリデといい、東欧のあたりは名バイオリニストの名産地なのかも――
バティアシュヴィリは何枚かCDが出ているのですべて入手したい。
(かつて庄司紗矢香さんが16,7歳の頃、僕は、彼女が、バティアシュヴィリのようなバイオリニストに成長することを夢見ていたのかもしれない。しかし、その夢はもろくも打ち砕かれた訳だが)
・クラウス・テンシュテットの指揮したマーラーの交響曲全集。前々から欲しかった録音。妻からのプレゼント。
やはりとてつもなく素晴らしい演奏。ほとんど偏執狂的に、すべての細部を丁寧に誠実に描き出していく演奏。
圧倒的なスケール感を求めるという風ではなく、とにかくあるべき音楽の流れを正確に作り出す。また、逆に安全運転を意識して小さくまとめることもしない。
あまりに真面目に、誠実に、すべてが響くので、若干、マーラー特有の狂気じみた凄みや混沌の気配が少ない印象を受ける部分もある――マーラーは、もう、忘我の境地で、髪を振り乱して演奏したはずだが、テンシュテットは、そのような魔物に取り付かれてはいないかな――というような。しかしだからといってバーンスタインのほうがよいかといえば、それは違う。多分。
・尊敬する古典四重奏団の新譜、満を持してバルトークの弦楽四重奏曲全集。これはすごい! とにかく、想像も出来なかったバルトーク演奏。そして、これはたしかに古典四重奏団の演奏だ、と思われて、嬉しくなる。
緻密に、まじめに、一点も揺るがせにせず、という楷書の演奏でありながら、かつまた全てが柔軟で、すみずみまで音楽が生きている。古典四重奏団らしく、鋭く、クリアーな不協和音はどこまでも正確かつ明晰な音程で、曖昧にぼかしたり、まろやかなヴィヴラートで誤魔化したりしない。
変に分析的だったり、前衛的な難解さを演出したりしない。まるで、ハイドンでも演奏しているかのように、気負わず自然な音楽。しかし、それゆえに、僕がバルトークに、かつて惚れ込んだときに、魅力的に感じていた、ゴツゴツ、トゲトゲした険しい印象はない訳で――バルトークはすでに前衛でもなんでもなく、文字通りの古典になった、ということなのだろうと思う。
(ここでは、新しい時代の最新のバルトーク像が提出されているともいえる。それに対しタカーチ四重奏団の演奏は、従来の前衛音楽としてのバルトーク像を、最高水準で示していると思える。どちらも活き活きとした演奏であり、どちらも捨てがたい。)